アクアリウムをする上で、水槽内の水質の状態を知っておいた方がいい項目として、pH・アンモニア・亜硝酸・硝酸など多くの判断項目があります。
水槽を立ち上げたばかりの時の水質と、飼育水が出来上がってきた時の水質に差があるように、アクアリウムをする上で水槽内の水質は重要なファクターとなります。
水槽内に問題が発生した場合には、この水質がどのように変化しているかを判断材料として、対処方法を見つける事も出来ます。そこで、熱帯魚水槽や水草水槽など、特にアクアリウムを始めたばかりの方にとって重要と思われる、水槽水質の基礎知識について解説してみます。
水槽の水質について
水槽内の水質を測定したり出来る項目として以下の物があります。
特に水質として、重要度の高い項目の順で並べてみました。
pH(ペーハー、ピーエッチ)
水槽内の水素イオン濃度を表す指数で、その指数により酸性・中性・アルカリ性なのかを判断出来ます。水槽内の熱帯魚や水草などが、どのpHを好むのかにより維持管理していく必要があります。
アンモニア(NH3/NH4)
熱帯魚への餌やフン、生体などの死骸や枯れた水草などから発生します。特にこのアンモニアの濃度が水槽内で高くなると、熱帯魚やエビ等にとってとても生きていける環境では無くなります。そこで、アンモニアを亜硝酸へと分解する硝化細菌の繁殖が必要となります。
亜硝酸(NO2)
アンモニアを硝化細菌が分解する事によって、この亜硝酸(NO2)が発生してきます。アンモニアと同じように水槽内にあると、熱帯魚にとってとても生きていける環境では無くなります。そこで、この亜硝酸を熱帯魚等には比較的無害と言われる硝酸へ分解する硝化細菌の繁殖が必要となります。
硝酸(NO3)
亜硝酸が分解されて、通常の水槽環境下では最後に残る物質です。熱帯魚等には比較的安全な物質で、ここまで分解されれば水槽に熱帯魚やエビなどが飼育出来る環境となります。
アンモニアや亜硝酸が水槽より検出されて、硝酸が検出されない場合はまだ、水槽の水が出来上がっていないなどと言われます。
酸素(O2)
熱帯魚やエビ、水草、ろ過バクテリアなどが必要とする物質。水槽内では酸素の消費量は多く、水温によっても水槽内の酸素濃度が変わってきます。水温が高くなると、ろ過バクテリアが活発になり酸素の消費も多くなるため、水槽内の酸素が不足しがちになります。
それが理由で特に夏場には飼育水が高水温になりがちで、酸素濃度が低くなりがちになるのでしっかりと水槽に酸素を供給する必要があります。そこで、エアレーションを行う事で、水槽内の酸素濃度を増やしてあげる事が必須となります。
塩素(Cl2)/残留塩素(ClO)
水道水に含まれる消毒や殺菌を目的とした物質で、塩素が含まれた水を水槽に入れると、熱帯魚のエラにダメージを与えたり、ろ過バクテリアを殺菌してしまったりと非常に問題となります。
そこで、ハイポなどの塩素中和剤を使って水道水に含まれる塩素を中和して水槽に入れる必要があります。
また、気温が高い時期(特に夏場など)は、一般的に水道水に含まれる塩素濃度も高くなります。
二酸化炭素(CO2)
熱帯魚やエビ、水草の呼吸により排出される物質で、水草が光合成をするためには必要なので、水草水槽では照明点灯時に強制的に二酸化炭素(CO2)を添加して、水草の生長を促す場合が多いです。
リン酸(PO4)
熱帯魚やエビなどの餌、フン、枯れた水草、生体の死骸などから水槽内に発生します。水草水槽などでは、水草が生長する上で必要としますがそれは微々たる量で、水槽内の環境だと余剰気味になりコケなどの発生原因になります。
炭酸塩硬度(KH)
水槽内のカルシウムやマグネシウム・炭酸の総量を表した指数で、この指数が高いと水槽水のpHが下がりにくくなります。逆に、この指数が低いと水槽水のpHが下がりやすくなるため、水槽水のpHの変化が大きくなります。
また、アクアリウムでのKHは、アルカリ度として説明されている場合が多いです。
総硬度(GH)
水槽水中のカルシウム塩やマグネシウム塩などの総濃度を表した指数で、この指数が低いと軟水となり、逆に高いと硬水となります。一般的に、日本の水道水は軟水の場合が多いです。多くの水草は軟水が向いていますが、中には硬水の方が育ちやすい水草もあります。
水槽の水質をチェックするポイント
特に毎日水槽の水質をチェックする必要はありませんが、何か水槽にトラブルなどがおきた場合には、水質をチェックする事でその原因や対処方法などを数値として判断する事が出来ます。
熱帯魚などの生体に異常が無い場合には、逆に無理をして好みの水質へ水槽の水質を変化させるよりもそのまま維持した方がいい場合もあります。
水槽を新規に立ち上げた場合
水槽を新規に立ち上げた場合には、水槽内のアンモニアや亜硝酸など生体にとって毒性のある物質を硝化してくれる細菌(ろ過バクテリア)の繁殖が不可欠です。通常なら、アンモニアが検出された後に亜硝酸が検出されるようになり、その後硝酸が検出されるようになります。
この硝化サイクルをさまざまな水槽用フィルター内で行えるようにろ過バクテリアの繁殖が行われ、水槽の水が出来た頃となります。
このバクテリアの繁殖を客観的に確認しようと思えば、水槽水質のチェックが欠かせません。通常、しっかり立ち上がった水槽の環境だと、アンモニア・亜硝酸は検出されません。
しかし、せっかく水槽内に繁殖したろ過バクテリアに影響を与える何か(塩素を中和せずに水槽の水換えを行った場合やろ材を水道水で濯いでしまった場合など)を行った場合には、水槽の飼育水が白濁りしたりします。
そこで、この様な状態になった場合など水質をチェックをして、アンモニアや亜硝酸などが検出されたら、ろ過バクテリアにダメージを与えてしまった事がわかり、早急に何をしたらいいのかの判断材料にもなります。
コケの状態がひどい場合
水槽内にコケが大量に発生し出した場合にも、水質をチェックする事で原因を探る事が出来ます。実際には、水質のみが原因とは限りませんが一つの要因となっている場合が多いです。水槽内に硝酸塩やリン酸が多くなってくると、水槽内にコケが大量発生する事に繋がります。
飼育生体の状態が悪い場合
飼育している熱帯魚やエビの状態が悪い場合にも、水槽水質をチェックするポイントです。気温の変化により、水槽の水温が高くなった場合などは、水槽内の溶存酸素濃度が低くなる上に、バクテリアの活動が活発になり水槽内の酸素が足らなくなる場合があります。
その場合には、エビなどは特に敏感に反応するので、エアレーションによる酸素供給が必要になってきます。
水草が上手く育たない場合
水草にとって一番は光ですが、やはり余りにも育ちにくい水質で育成するのと好みの水質で育成するのでは、水草の状態が違ってきます。特に、pHや総硬度の影響で水槽の水質が弱酸性の軟水なのか、弱アルカリ性の硬水なのかは水草育成の上での大きなポイントにもなります。
水草水槽の場合は、弱酸性の軟水環境を好む水草が多いので、いかにその環境に近づけられるかが一つのポイントとなってきます。
代表的な水質チェック用品
テトラテスト 6in1
25回分
特に水槽立ち上げ時の亜硝酸や硝酸塩の測定に使えます。価格も1,000円程度で25回測定出来るので、水槽内の飼育水が立ち上がる約1ヶ月分の水質をチェックする事が出来ます。
この試験薬を縦半分に切って使うと倍使えるようになるのは、アクアリウムをしている人にとっては有名な話です。ただし、この試験紙のpHが示す値については信頼性が薄いです。
まとめ
アクアリウムをする上で、重要な水槽内の水質項目はpHから始まり他にも色々な項目がありますが、絶対に全ての項目をチェックしないといけない訳では有りません。
水槽内の状態がいい時に水質チェックをしておくと、その記録から水槽内の状態が悪くなった時に何が変化しているのかを把握する上で、数値として確認する事が出来るので、水槽内の状態が悪くなった原因究明や対策に役立ちます。
特に水槽立ち上げ時には、水槽内の水質が大きく変化していくので、それらを判断する上でも自分の水槽水質について知っておく事は重要です。
更新日:2022/12/15
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