水槽内に突然生える黒髭コケ(黒ヒゲ苔)。この黒髭苔と格闘しているアクアリストは非常に多いと思います。特に水草水槽をしているアクアリストにとってこの黒髭苔の発生は、特に悩ましい事です。
また、この苔が生えた事でアクアリウムに対する熱が冷めてしまいアクアリウム自体をやめていく人もいるでしょう。
そんな、悩めるアクアリスの方に送る水槽内に黒髭コケが発生する原因、そして、その対策・対処の方法です。
黒髭コケとは?
まず黒髭コケとは、紅藻類に分類されます。海水水槽等をしている方なら知っている方も多いと思います。そもそも、紅藻類とは海に約2,000種類・淡水で約200種類存在しているそうです。
紅藻類を身近な物で言えば、海苔の仲間にあたるそうです。
黒髭コケが必要とする養分
黒髭コケは紅藻類に分類されるので、紅藻類が必要とする養分は何かとなります。
ずばり、リン酸になります。
そして、特にアクアリウムをする上で水槽水中に一番過剰栄養素になってしまうであろう、リン酸を栄養源として黒髭コケ(紅藻類)は成長します。
水草の栄養要求量
レッドフィールドという研究者が「藻類の種類が水中の窒素とリンの比率により決定される」という説です。
赤字の部分が藻の発生要因が高くなる部分で、太字の部分が安定している状態みたいです。
これを見ると、いかに水草水槽をする上でもリン酸の要求量が少ないかが解ります。
陸上の植物であれば、チッソ・リン・カリウムの肥料要求比率が1:1:1となりますが、水草は抽水性植物であるため要求比率が1:0.1:0.5となります。
また、熱帯魚の餌(人工飼料)に含まれているチッソ・リン・カリウムの配合比率で見てみると1:0.3:0.15となるそうです。
水草が必要とする割合では0.1しか必要のない状態で、熱帯魚へのエサで0.3も多く与えているような形になります。
単純には言えませんが、熱帯魚にエサをやることで間違いなくリン酸は水槽内で過剰になっていくと言えます。
黒髭コケの栄養素のリン酸を減らすには
水槽内に過剰になる栄養素を減らして藻類の発生を防ぐために水換えを行ったりするでしょう。
しかし、普通に水換えを行っていてもチッソやカリウムは水槽外に持ち出せても、リン酸自体は減らす事は出来ません。
リン酸イオンは鉄イオンと再溶解しない形で水槽内に沈殿するので、普通に水換えを行っているだけではリン酸の量を減らす事が出来ません。
沈殿・蓄積されたリン酸は、水槽の汚泥物やフィルターなどに汚泥物としての溜まるので、定期的にフィルターをメンテナンスすると水槽内のリン酸を減らす事が出来ます。
また、底床の隙間に溜まった汚泥なども定期的に吸い取った方が、水槽外に過剰になったリン酸を排出するという目的では重要になってくるでしょう。
黒髭コケを成長させる光の波長
黒髭コケ(紅藻類)を成長させる光の波長があります。植物は通常、青と赤の光が必要で緑の光は必要としていないと言われています。
水草の色素体として、クロロフィルaとクロロフィルbの色素体を持っていてその光の吸収波長が生長要因となります。
そして、他の色素体では吸収が難しい緑色波長を色素体として持つのが黒髭コケ(紅藻類)となります。
図を見てもらうと解りますが、アクアリストの天敵である藍藻・黒髭(紅藻類)は、クロロフィルa・カロチン、そして、一番強くフィコビリンの色素を持っている事が解ります。
要するに、水草や他の藻類が成長するために必要なクロロフィルを使いながら、さらに必要としない緑色~黄色付近の色素のフィコビリンを一番効率良く使って成長すると言う事になります。
照明の光を青と赤にしたら、藍藻や黒髭コケは発生しにくいという事になりますが、鑑賞目的の水草水槽等では現実的ではないでしょう。
ただ、頭にこの事が入ってれば少しは対策する上で違ってくると思います。
黒髭コケを発生させないための方法
先程も書きましたが、黒髭コケは水槽内にリン酸が過剰になったときに発生しやすいと考えられます。
そこで、いかに黒髭コケを水槽内に発生させないためには、いかにリン酸を減らすかが重要になってきます。
リン酸の発生源を減らす
まずは、水槽内のリン酸が増える理由を考える必要があります。先程も書きましたが、熱帯魚への餌にはリン酸が多く含まれています。熱帯魚へ餌を与えて、食べ残しの餌が水槽内に残っている場合は、早く取り出す必要があります。
また、飼育している熱帯魚の死骸が水槽内にある場合にも、早く水槽外へ取り出す必要があります。生体にはリン酸が含まれているので、その生体の死骸からはリン酸が多く放出されます。それが原因で、水槽内のリン酸が増える事にもなります。
水草は、栄養分としてリン酸を必要としています。そのリン酸を含んだ水草が、水槽内で枯れて残っている場合にも水槽内にリン酸を放出するので、枯れたり弱ったりした水草を早めに取り出す必要があります。
また、水草への栄養として与える肥料にもリン酸が大量に含まれている物があるので、その含有量を見直してみるのも水槽内のリン酸量を減らす対策にもなります。
これらの事をしても、リン酸は水槽内に徐々に蓄積されていくので、次の事などをして対処していく必要があります。
定期的にフィルター内の清掃をする
外部フィルターなど、汚泥が溜まりやすいところにリン酸が溜まってくるので、定期的にフィルターを掃除してリン酸濃度を減らす必要があります。
以前、30cm水槽をリセット立ち上げた時にすぐに黒髭コケに悩まされてしまいましたが、まさにこれはリセットする時に外部フィルター自体は掃除等をせず直ぐに水槽を立ち上げようと、そのまま流用したのが原因です。
そして、その対処として外部フィルターを清掃したら、黒髭コケの発生は相当抑える事が出来ました。
逆に緑藻等が急激に生えてきたので、水槽内のリン酸が相当減ったのだと思います。
リン酸を吸着する化学物質を使う
これもリン酸を水槽外に排出させるかを考えていたさいに使った物です。
記事を読んでもらえば解りますが、藻類がひどい場合は毎日使ってリン酸を吸着させろって事です。
ソイル等に吸着させてリン酸を減らす
吸着系のソイルは、ある程度のリン酸を吸着してくれると言われています。しかし、吸着した後に溶解してリン酸を放出してしまいます。
そこで、ソイルに頼るのではなく外部フィルターなどに入れてリン酸を吸着させた後、定期的に処分する形になります。
水槽内の水流を工夫する
水流が強く当たる部分に、よく黒髭コケが発生すると言われています。特に最初はシャワーパイプの排水口部分などに発生したり、水流の当たる成長の遅い水草の葉(ミクロソリウムやアヌビアス類)などに良く生えてきたりします。
また、フィルターに水槽水を吸い込む給水口につけたストレーナーの部分にも、黒髭コケは生えます。水槽内を漂いながら、引っかかりやすい所で留まり、そこから成長していくと考えられます。
流木や石類、シャワーパイプ等は、黒髭コケが生えても対処する方法があるので、そこまで気にしなくてもいいでしょう。それよりも、水草に生えたらなかなか対処が難しいので、さっさとカットしてしまう方がいいでしょう。
黒髭コケが発生した場合の対処方法
木酢液で対処する
木酢液は木炭を焼く時に出る煙から採取し、一定期間静置した後、3層に分離した中間層のみを採取し精製した液です。
とても有名な黒髭コケへの対処方法ですが、木酢液を黒髭コケに塗布して枯らしてしまう方法です。木酢液は、とてもpHは低いので水槽内に大量に入れてしまうととんでもない事になってしまうので注意が必要です。
大体、この木酢液はpH2.8位です。木酢液は、ホームセンター等で売っています。そして、この木酢液はとても匂います。家族がいる方は、部屋が臭いと文句を言われないよう換気に注意して作業して下さい。
まさに、正露丸の匂いですw
水槽から取り出した、流木や石などにこの木酢液を塗布して1分ほど置いてしっかり濯いだ後水槽に戻すと
赤く枯れた状態になります。枯れた状態になれば、それまでは見向きもしなかったエビ類が食べてくれるので、すぐに無くなり対処できます。特にヤマトヌマエビだとその威力は強力で、またたく間に無くなっていきます。
硬い葉を持つ水草(ミクロソリウムやアヌビアス類)ならこの方法で対処する事は可能ですが、あまり永い間木酢液を付けた状態だと枯れてしまいます。さっさと塗布して、濯いで水槽に戻して黒髭コケが赤くなっていれば大丈夫です。
また、水槽外へ取り出すのが難しいレイアウト素材の場合は、スポイト等で直接木酢液を吹き掛ける事でも対処する事が出来ます。ただし、大量に使用すると水槽内のpHが急激に変化する場合があるので、水替え直前に処理してから水替えをするなどした方がいいです。
生物兵器で対処する
黒髭コケを食べる生体といえば、サイアミーズフライングフォックスになりますが、あまりにも生えて大きくなった時にはあまり効果がありません。どちらかと言うと、予防で入れておくべき生体と言えるのではないでしょうか。
ただし、60cm水槽未満の水槽の場合、大きくなった時に持て余してしまう事があります。60cm水槽未満の場合には、他の対処方法で黒髭コケへ対処した方がいいです。
まとめ
黒髭コケ(紅藻類)の発生原因と成長要因・対策・対処について調べてみました。このブログ内でも特にリン酸については過剰に反応して色々調べ、そして、メーカーに直接問い合わせたりもしてみました。
まさに、今現在このサイトはリン酸をいかに減らして、黒髭コケを減らすかをテーマにした形になっていますw文章内にまだまだ足らない事があるので、もし、他にもこんな事があるよという方は是非、コメント欄等で教えて下さい。
最終更新日:2023年12月13日
コメント
有難うございます、私の水槽も黒髪藻が伸びすぎたようなので、残念なのですが。
葉っぱをカットしようと思います。
ありがとうございます
90センチ水槽の中が黒い草原に成りつつあります
やっぱり土壌からやり直さなくてはいけないのか〜
私の場合、淡水でリフジウム水槽をやっていますが、単にに水質の問題なら上下両方の水槽が黒髭ゴケまみれになると思うのですが現状、上の水槽は黒髭ゴケだらけ! 下の水槽は出水のパイプ付近に少し見受けられるだけで、他には全く有りません。
黒髭ゴケを食べる生体は飼っていません。なのでさっぱり原因がわかりません。
是非ともこのナゾを解明して頂きたいと思います。
黒髭ゴケは確かにいやらしいですね。
私の水槽の水草は、アヌビアスナナとミクロソリウムウインドローブが中心で、放っておくと黒髭が繁殖して非常に見苦しくなります。
パイプ類、流木・石などの掃除は確かに木酢液&ヤマトヌマエビが効果的ですが、問題は水草です。
私は水草に着いた黒髭は、水槽から引き上げて麻布の上に置き、散水ノズルのジェット水流で吹き飛ばします。
水勢の加減が難しいかも知れませんが、ミクロソリウムやナナに付着した黒髭はコレで一発です。
吹き飛ばした後、水草を木酢液にサッと浸して洗い流せばOK。
ナナに付着した他のコケは、スポンジで擦って落とします。
ナナは葉が固く、擦り痛みもないのでその後の成長にも影響はありません。トリミングしなくても良いので、自然なスタイルを楽しめます。
中学生の頃から熱帯魚の飼育を始めて47年、黒髭やコケ類の除去は色々試しましたが、今はこんな所かな。
なるほどです。よく黒髭を焼く、という言い方を目にするのですが、木酸酢での除去のことなのですね。
黒髭対策の記事には憚られるかもしれないコメントになるのですが、私の水槽では黒髭が発生した事が無いのです。ありがたいけど何故?という疑問からこちらにたどり着きました。
45・30・30の水槽で過密に生態を入れていて、CO2添加はなしです。砂地と水草区域に分けていて、多くの方同様、昼夜で照明とエアレーションを切り替えてます。
コリドラスが居るのです。大食漢でいっぱい置き土産をしていくので、2日置き位にスポイトでそれらを換水と兼ねて掃除しています。これだったんですね!黒髭発生しないの理由は!
(水を吸い上げさせたスポイトで残餌や置き土産など吹き上げて回収してます)
これはわからないのですが、水草地帯はパワーサンドに赤玉土を置いています。バクテリアも棲むし昔からある土なので安心。経年で劣化した赤玉土はクーリーローチが崩すのでそれは濾過槽行き。こんなにいい素材をアクアリストさんはあまり使わないのが不思議なくらいです。
一匹おそらく餓死でコリを亡くしてしまっているので餌は多めです。なので水中の栄養は過多(笑)
なので藍藻や苔の発生がすさまじいです。グリーンネオンとオトシンが居るので前面ガラスのみきれいにしてます。緑の苔や藻類は魚の発色にいいとも聞きます^^
茶苔も発生しない理由もわかりました。
他の理由もあるかもしれませんが、しっくりすとんと落ちてきたのでおそらく。
長々と失礼しました。
細かくて数値でわかりやすい記事で、読んでて楽しかったです。
ありがとうございました(^o^)
>ほざねさんへ
初めまして、ブラックコーヒーです。
コメントありがとうございます。
黒髭が発生しない水槽はうらやましいです。
多分、ほざねさんの水槽管理が素晴らしいからでしょう。
また、赤玉土を使用しているのもポイントではないでしょうか。
赤玉土は、リン酸を吸着すると言われているので、ほざねさんの日々の水槽管理と赤玉土の効果が黒髭コケを発生させない水槽になっているのでしょう。
過密飼育で黒髭無しの状態は、本当にスゴイの一言です。
自分もコリ水槽がありますが、餌の量を減らせないので1週間に1回程度の換水では黒髭や他の藻類の発生は防ぎにくいです。(照明点灯時間なども関係しますが)
やはり、こまめな換水が一番いいのでしょう。
これからも当サイトをよろしくお願いします。
植物にとって、窒素、リン酸、カリウムは三大栄養素であり、コケにもあてはまります。
その内、リン酸だけを減らしたところで黒髭はなくなりません。むしろ他の水草にとってトラブルになるだけです。
ましてや、木さく酢や生物兵器を投入し効果はあっても水槽内に環境を見直さないとまた復活します。
黑髭で悩んでいる方は、元の水と水槽内のカルシウム、マグネシウムの値(硬度)を調べたほうが良いです。
地域により、水道水の硬度は全く別なので、硬水の地域での水草飼育はとても難易度が上がります
黒髭は軟水にはほぼ発生しません。
水道水が軟水で水槽内が硬水であれば、それはレイアウトで使用している石や、ソイルを見直したほうが良いです。
リン酸を減らして黑髭がなくなるというのは論外です
>ルーさんへ
貴重なコメントありがとうございます。
黒髭コケと水の硬度の関係については、あまり考えた事がありませんでした。
水草水槽にとって弱酸性の軟水環境が最善である事は当然(軟水だと育たない水草もありますが)です。
常に水槽の硬度は測定しているのですが、KH(硬度)が低くても(1.5dH)黒髭コケは発生しています。ルーさんが言われている、「黒髭は軟水にはほぼ発生しません」の軟水とはどれ位の硬度を指しているのでしょうか?
また、当記事の冒頭部分でも触れていますが、リン酸は「水草の生長に欠かせない三大栄養素の一つ」なので、リン酸が不必要とは考えていません。
ただ、水草は抽水性植物という事で、陸上の植物と同様に考えては他のトラブルが発生しやすいです。水草のリン酸要求量は、チッソやカリウムと比べてかなり低いと考えられています。
その様な状態で特にリン酸が増えると、水草が必要とする微量元素の吸収を阻害するケースがあります。ただでさえ、水槽内で生体を飼育している環境だと、餌や糞等から窒素やリン酸は過剰気味になってきます。
しかし、黒髭コケが水槽内で発生して困っている方は、水草水槽とは限らず生体メインの方もいるはずです。
例えば生体メインで水槽管理をしている方にとっては、黒髭コケの発生原因が分かればその対処方法を試していけばいいと考えています。
「リン酸を減らして黒髭がなくなるというのは論外」との事ですが、一度発生した黒髭コケをリン酸を減らす事で失くせるとは考えていません。黒髭コケをこれ以上増やさないための対処方法として、「水槽内で過剰になっているリン酸を減らそう!」と言っているだけです。
一度発生した黒髭コケは、やはり木酢液等で処理するのが一番早い方法です。その後、黒髭コケを発生させないために水槽内の環境を見直す点として、当記事内の「黒髭コケを発生させないための方法」を試してもらえばいいと考えています。