水槽の水質管理で重要な項目であるpH。飼育している熱帯魚が好みのpH適正範囲を大きく超えてしまった場合などは、調子を崩してしまったりします。
水草においては、ほとんどの水草が弱酸性の水質を好むなどと言われているほど、生体や水草にとって水槽水のpHは大きな影響を与えます。
そこで、水槽水質を管理する上で重要なpHについての基礎知識とpH測定の方法などを解説します。
水槽水質で重要なpH(ペーハー、ピーエッチ)
pHの意味
pHは、水に含まれる水素イオン濃度指数を表し、この指数が小さいと酸性・大きいとアルカリ性となります。
アクアリウムでは、熱帯魚やエビ、水草などの飼育する生体や植物等によって、好みが分かれるため水槽という飼育環境ではこの指数が大きな影響を与えます。
購入してきた生体が飼育されていた水槽水のpHと、これから飼育しようとする水槽水のpHが違い過ぎた場合、そのまま生体を水槽に入れるとpHショックという状態で、熱帯魚やエビ等が水槽内で暴れまわる程の影響を与えるため、生体を飼育する上で大事な指数となります。
また、pHがアルカリ性よりだと水槽内のアンモニアの毒性がさらに高くなるなどもあります。
淡水熱帯魚の場合、弱酸性から中性を好む場合が多く、また、逆に海水魚の場合は弱アルカリ性を好む等飼育環境でもこのpHの指数は重要となってきます。
アクアリウムにおけるpHが示す酸性やアルカリ性
通常、良く触れる機会が多い石鹸や洗剤などの、弱酸性や弱アルカリ性の範囲を表すpH値と、アクアリウムなどで示されている弱酸性や弱アルカリ性のpHの範囲は違っています。
pH値 | 液性 |
---|---|
3.0未満 | 酸性 |
3.0以上6.0未満 | 弱酸性 |
6.0以上8.0以下 | 中性 |
8.0を超えて11.0以下 | 弱アルカリ性 |
11.0を超えるもの | アルカリ性 |
上記表が、一般的に知られている弱酸性や弱アルカリ性の範囲です。
しかし、このpHの値をアクアリウムの世界へそのまま適用すると、水槽内の生態系に大きな影響を与えてしまいます。
弱酸性が好みの淡水魚だとして、この表のpHに当てはめて水槽水を3.0~6.0の範囲に収めると熱帯魚が適応するべき水質のpHが低すぎて逆に体調を崩したり、水槽内でのろ過バクテリアの活動自体が鈍くなりアンモニアや亜硝酸の分解に大きな影響が出てきたりします。
という事で、アクアリウム上では一般的なpHの範囲が違って表されています。
しかし、必ずしもこの範囲であるという定義されているような物は無いです。
pH値 | 液性 |
---|---|
~6.0未満 | 酸性 |
6.0以上7.0未満 | 弱酸性 |
7.0あたり | 中性 |
7.0以上8.0未満 | 弱アルカリ性 |
8.0以上 | アルカリ性 |
水槽内のpHが変動する原因
水槽の水には、水道の水を使うケースが多いと思いますが通常の水道水のpHの範囲は水道水質基準値として、pH5.8~8.6と定められています。
実際には、蛇口から出てくる水のpHは6.8~7.2前後の場合が多いのではないでしょうか。
そして、この水道から出る水を水槽水として使っていっても、時間の経過や水槽内に設置している物によってpHが変動していきます。
水槽水のpHを下げる要因
まず、水槽の飼育水のpHを下げる要因として、次の事が考えられます。
これらの事が要因で、水槽水のpHが下がっていきます。
底床などに新しいソイルを使用している場合
新しいソイルは、pHと相関関係にあるKHを下げる効果があります。それらが原因で新しいソイルを用いた直後はpHが下がりやすい状態となります。
CO2を添加している場合
水草水槽などでCO2を強制添加している場合なども、KHやCO2添加量との関係でpHが下がりやすい状態となります。
pH降下剤を使用した場合
多くの熱帯魚に適した水質を簡単につくることができます。
このようなKHを下げる製品を使用した場合にも、水槽のpHは下がりやすい状態となります。
硝酸やリン酸の蓄積
生体への餌やフン、餌などの分解生成の最終物質として、硝酸やリン酸が水槽内に溜まってきます。
それらが水槽水を弱酸性へ傾けていきます。
腐食酸などを含む物を水槽内に入れた場合
レイアウトに用いる流木などから出てくる腐食酸なども、水槽水のpHを弱酸性に傾けます。
また、流木などを使わずにマジックリーフなどを水槽内に入れて、ブラックウォーターにすることにより水槽水を弱酸性状態に出来ます。袋に個別に入っているのでとても使いやすいタイプです。
水槽水のpHを上げる要因
次に水槽水のpHが上げる要因として次の事が考えられます。
これらの事が要因となり、水槽水のpHが上がっていきます。
水草への肥料(カリウム)
カリウム肥料は、アルカリ性を示します。そのカリウム肥料を水槽内に添加したりすると、水槽水はアルカリよりになっていきます。
サンゴや貝殻類
サンゴや貝殻類にはカルシウムなどが多く含まれているので、水中に溶け出した場合にKHが上昇しそれによりpHが上がっていきます。
レイアウトで使われる石類
レイアウトなどで使われる石などには、大なり小なりカルシウムやマグネシウムが含まれています。
そのカルシウムやマグネシウムを多く含む石は、水槽水のKHを上昇させます。
水槽水中のKHの値が上昇すると、水槽水のpHが上がりやすくなっていきます。
pH上昇剤を使用した場合
徐々に調整することにより、魚や水草、微生物にも安全な水に改善できます。
これらのようなpH上昇剤を使用する事により、水槽水のpHを上げる事が出来ます。ただし、いきなり大量に使用すると、思いがけずpHが上昇し過ぎてしまうので、少量から使い始めて適宜調整していく必要があります。
硝酸やリン酸を吸着する物質
硝酸やリン酸が蓄積すると、水槽水は弱酸性へと傾いていきますが、それらを吸着する物を使うと逆に弱アルカリ性へと傾けていく可能性もあります。
硝酸やリン酸を吸着する物を水槽水へ添加や使用する事で、水槽のpHを上げて弱アルカリ性の水質へと変化させる事が出来ます。
pH測定方法
水槽水のpHを測定するには、試薬や試験紙、測定機器があります。試験紙の場合は、価格も安く手軽に測定出来ますが、その精度自体は…
試薬の場合は、試験管等に試薬を数滴垂らして、30秒や60秒程まってから比色表と比較してpHを測定します。価格も割りと安く、測定精度自体も高めです。
測定機器の場合は、価格は若干高くなりますが、手軽にpHを測定出来、精度も0.1刻みで測定できます。
pHメーター
1点校正タイプのpHメーターですが、pHを0.1単位で測定出来るのでとても便利に使えています。やはり、たまに校正液で7.0の校正をしてあげないといけませんが、それ以上に何回でも測定出来るのでpHを何度も測定する頻度が多い場合にはオススメです。
pH測定試薬
試験管などに水槽水を入れて、試薬を滴下してその変化した色でpHがどれ位かを判断します。値段も1,000円程度と安価で50回程度測る事が出来ます。
pH測定試験紙
価格も1,000円以下と安く、手軽にpHを測定する事が出来る試薬紙です。ただし、細かい数字までは測定出来ないので、大体pHがこれ位だという感じで把握するのに向いてます。
水槽水質で重要なpHについての基礎知識のまとめ
水槽の水質をチェックする上で、とても重要になってくるのがpHの値。
水槽水のpH値が弱アルカリ性よりだと、コケの発生原因になったり、逆にアクアリウム上での弱酸性の範囲を超えてくると生体やろ過バクテリアへの影響も出たりします。
そこで、自分の水槽環境における水質が原因で、生体や水草などがダメージを受けている場合などは、飼育水のpHをチェックして対策方法や対処方法などを見つける事も出来ます。
最終更新日:2023/03/28
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