アクアリウムをする上で欠かせない器具の一つに挙げられるのが、水槽用フィルター(濾過器)です。水槽内の汚れた飼育水を、浄化する目的で使われますが。
ただ、飼育水の浄化といっても飼育水そのものの見た目を綺麗にするだけではなく、飼育している熱帯魚等にとって有害なアンモニアや亜硝酸を無害なレベルまで分解する目的でも使われます。
水槽の目的や水槽サイズで、選択出来るろ過フィルターが絞られてきます。そこで、水槽用フィルター(ろ過器)の種類・特徴をまとめて、目的別にフィルターを選択出来るように解説します。
水槽用フィルター(ろ過器)の種類と目的
ろ過フィルターの種類
水槽用フィルター(ろ過器)には、色々な形状や大きさがあり、水槽のろ過目的によってどれを選択すれば良いかが決まってきます。そこで、まずは水槽用フィルター(ろ過器)の種類です。
- 投げ込み式フィルター(生物ろ過・物理ろ過・吸着ろ過)
- スポンジフィルター(生物ろ過・物理ろ過)
- 外掛け式フィルター(吸着ろ過・生物ろ過)
- 底面フィルター(生物ろ過・物理ろ過)
- 上部式フィルター(生物ろ過・物理ろ過・吸着ろ過)
- 外部式フィルター(生物ろ過・物理ろ過・吸着ろ過)
- オーバーフロー式フィルター(生物ろ過・物理ろ過・吸着ろ過)
このようにろ過フィルターは、大体7種類に分ける事が出来ます。上記リストは、設置が簡単な順にリスト化してみました。
ただし、一番最後のオーバーフロー式フィルターは、設置方法などを考えると初心者向けでは無いので、この記事内では解説を省いています。
投げ込み式フィルターの仕組みや目的、メリットやデメリット
投げ込み式フィルターの仕組み
水槽内に設置したままでもろ材を交換できるようになり、メンテナンス性が向上しました。
投げ込み式フィルターを水槽内に本体ごと沈めて、エアーポンプを接続してエアーの力で水流を作り、投げ込み式フィルター内に汚れなどを集めてろ過します。ろ材となる石(生物ろ過)が底部分に埋め込まれて、また、交換できるろ材(物理ろ過)部分の2つの構成になっています。
エアーポンプを同時に使うため、ろ過と同時に水槽内にエアレーションを行え、水槽内の溶存酸素量を高めてくれます。
そして、水作のこのタイプ投げ込み式フィルターは、真ん中の部分に吸着ろ材(活性炭)をカートリッジ式で取り付ける事もでき、ある意味3つのろ過とエアレーションを一遍に行う事が出来る万能型の水槽用フィルター(ろ過器)になります。
投げ込み式フィルターを使う目的
本体のろ過容量が小さいため、水槽サイズが60cm水槽以上になるとそのろ過能力からメインのフィルターとしては使いずらいでしょう。
小型水槽・30cm・45cm水槽で生体メインの水槽では、十分にその能力を発揮してくれるでしょう。
投げ込み式フィルターのメリット・デメリット
スポンジ式フィルターの仕組みや目的、メリットやデメリット
スポンジ式フィルターの仕組み
排泄物や残餌を吸着する物理ろ過と、スポンジに繁殖したバクテリアにより有機物を分解する生物ろ過を、より小さなスペースで効率的に行えます。
スポンジ式フィルターにエアーポンプをつなぎ、エアーの力で飼育水をスポンジ部分から吸い上げて、循環ろ過させるのがスポンジフィルターになります。
スポンジ式フィルターの構造上、物理的に飼育水の汚れをスポンジ部分でろ過(物理ろ過)でき、また、スポンジ部分に繁殖するバクテリアによる有機物の分解を行う生物ろ過の役目も果たします。
エアーポンプをつなぐため、ろ過と一緒にエアレーション効果も期待できるので、飼育水の溶存酸素を増やす役目もあります。飼育水を吸い込む部分がスポンジの細かい形状のため、稚魚や稚エビの繁殖水槽にも良く使われています。
また、エアーポンプをつながず、外部フィルターなどの吸水部分につないでプレフィルター代わりに使う事もできます。
スポンジ式フィルターを使う目的
稚魚水槽に用いたり、隔離水槽などに向いています。また、ビーシュリンプなどの小型エビ水槽などの飼育にも、稚エビを吸い込みにくいフィルター構造から良く使用されています。外部フィルターの吸水口と接続して、物理ろ過代わりのプレフィルターとして使うのにも向いています。
スポンジ式フィルターを単独で使用する場合は、水槽サイズ的に小型・30cm・45cm水槽などで生体メインの水槽に向いているでしょう。プレフィルター代わり(他のろ過方式と併用)として使うのなら、ある程度の大きさの水槽まで許容範囲になるでしょう。
スポンジ式フィルターを使うメリット・デメリット
外掛け式フィルターの仕組みや目的、メリットやデメリット
外掛け式フィルターの仕組み
水槽のガラス淵に取り付けて使う、外掛け式フィルター。市販品の状態で付属する交換用フィルターは、活性炭をウールマットで包んだ物が多く、3週間程度で交換をメーカーにすすめられている場合が多いです。
外掛け式フィルターには水槽内に水中ポンプが付くタイプと、フィルター内にポンプが付くタイプがあり、前者はフィルターを作動させる呼び水が不要で、後者は呼び水が必要になります。
外掛けフィルターを使う目的
自分なりの改造ができるのが、最大の利用目的ではないでしょうか。ネット上にも色々と改造してろ過能力を高める情報などが載っていたりするので、自分で工夫する余地が大きく改造好きな方には向いているでしょう。
しかし、購入時のまま使うとろ過能力が大して期待できず、逆に発生するバクテリアまで交換用ろ材と一緒に捨ててしまうので、実際にはアクアリウム初心者の方には不向きなフィルターでもあります。隔離水槽で一時的に使ったりはできるでしょう。
また、水槽サイズ的には、小型・30cm水槽などで水草・生体少なめの水槽に向いているでしょう。
外掛け式フィルターは小型の水槽セットに付属している場合が多く、そのまま使った場合には、お世辞にもろ過能力が高いとは言えないフィルターです。しかし、自分で改造したりする方が多く、フィルター内に生物ろ過用のリングろ材を入れてろ過能力拡大を図ったりと、改造する楽しみがあるフィルターです。
流木などを水槽にセットした場合に、この外掛け式フィルター内に活性炭をセットして一時的に吸着ろ過させる目的でセットしたりと、1台持っておくと何かと便利なフィルターでもあります。
外掛け式フィルターを使うメリット・デメリット
底面式フィルターの仕組みや目的、メリットやデメリット
底面式フィルターの仕組み
砂利がろ過槽内に入りにくい薄型スリム設計です。
底面部サイズ:幅420mm×奥行き210mm×厚さ15mm
ベースフィルター1枚のサイズ:幅7mm×奥行き140mm
水槽内の底面に敷いて、その上に砂利などを敷いて生物ろ材として使う底面フィルター。水槽底面が生物ろ材として使えます。底床にソイルなどを用いる場合は、フィルター上に薄い細めのネットや薄くウールを敷いてフィルター内にソイルの粒が入らないようにして使います。
エアーリフト式の底面フィルターなら、エアレーション効果も期待できます。しかし、ろ材代わりに使う砂利などの隙間に汚泥などがたまりやすいので、頻繁に汚泥を抜いたりとメンテナンスが必要になります。
また、水槽底面に敷いて使うフィルターなので、一度セットしたら次にリセットするまで取り外す事が難しいです。
底面式フィルターを使う目的
生物ろ過の能力が強いので、生体の数を多く入れて飼育する事が出来るようになります。もちろん、それに比例して糞などの量も多くなるため、定期的に砂利の隙間から汚泥を抜くメンテナンス作業は必須になります。
しかし、フィルター自体の価格も安く維持費もかからないので、コストパフォーマンスに優れた水槽用フィルターになります。水槽サイズ的には、小型・30cm・45cmまでなら、生物ろ過能力を発揮してくれます。
60cm水槽以上なら、立ち上げパイプの部分を外部フィルターなどに接続して利用すれば水流の低下が抑えられて利用する事も可能となります。
底面式フィルターについて書いた記事があるので、もっと詳しく知りたいという方は参考にしてみて下さい。
底面式フィルターを使うメリット・デメリット
上部式フィルターの仕組みや目的、メリットやデメリット
上部式フィルターの仕組み
枠有り水槽の上に乗せて使う水槽用フィルター。昔からあるろ過フィルターで、生物ろ過・物理ろ過に優れたフィルターです。最近のフレームレス水槽には使う事ができないため、利用できる水槽は枠有り水槽だけとなります。
水槽内から飼育水をポンプを使用して汲み上げ、水槽上部に設置したフィルターBOX内へ設置してあるろ材へ汲み上げた飼育水を通し、再度、ろ過された飼育水を水槽内へ戻す仕組みです。
ろ過能力は大変優れていて、メンテナンス性も良く、綺麗になった飼育水が水槽内に戻るさいにエアレーション効果を起こすので、エアーポンプを別途設置する必要がない位です。
上部式フィルターを使う目的
メンテナンス性が良く、生物ろ過・物理ろ過も能力が高いため、生体メインの水槽に向いています。
ろ過槽内にろ材を色々入れる事もできるので、吸着系のろ材を入れれば3つのろ過をする事が可能な水槽用フィルターになります。
また、ろ過槽の状態を簡単に見る事が出来るので、メンテナンス時期を把握しやすいのも特徴です。
ただし、30cm以下の水槽に適合する物が見当たりません。水槽の枠の上に、いかにもフィルターですという感じで鎮座しているので、見た目的にお洒落な感じにはなりません。
逆に、フィルターからの戻り水が水槽内に落水するので、CO2が逃げやすくなり、水槽上部の半分程度をフィルターが覆うので照明を追加設置しにくいところがあります。このような事から、水草水槽には不向きなフィルターになります。
上部式フィルターを使うメリット・デメリット
外部式フィルターの仕組みや目的、メリット・デメリット
外部式フィルターの仕組み
水槽外に別にろ過器を設置して、水槽内に給水・排水パイプを用いて飼育水を循環させてろ過させるのが外部式フィルターです。密封されたその構造上CO2を逃がしにくく、水草水槽では必須と言えるぐらいの水槽用フィルターになります。
また、ろ過槽の中に色々なろ材を組み合わせて入れる事ができるので、生物ろ過・物理ろ過・吸着ろ過の3種のろ過方法が実現できます。
フィルターの密封性が高いという事は、逆にメンテナンス自体が面倒になり、ろ過槽自体もあまり見えない機種が多いので、フィルターのメンテナンス時期を把握しずらい水槽用フィルターになります。
外部式フィルターを使う場合は、別途設置スペースが必要となるのでその分、水槽まわりに設置スペースを確保する必要が出てきます。しかし、水槽内には給水・排水パイプのみを設置するので水槽内はスッキリとします。
その様な特徴から水草レイアウト水槽では、一番多く使われている水槽用フィルターになります。また、外部式フィルターには、ポンプをフィルター本体に内蔵したタイプと水槽内に水中ポンプを設置するタイプの2タイプがあります。
もちろん、揚水ポンプが本体に内蔵された物の方が、水槽内の見た目はスッキリします。逆に、水槽内に水中ポンプを設置するタイプの物は、水槽の横に外部フィルター本体を設置出来るメリットがあります。
外部式フィルターを使う目的
30cm水槽以上であれば、適合するフィルターを見つけやすいのも特徴です。また、CO2を逃がしにくい特性から、水草レイアウト水槽には一番向いている水槽用フィルターになります。
流量も多く、フィルター内のろ過層も大きい物が多く、他にプレフィルターやサブフィルターを接続したり、水槽用クーラーを接続したりと応用範囲が広いのも特徴となります。外部フィルターの記事もあるので、参考に読んでみて下さい。
ポンプ内蔵タイプの外部式フィルター
フィルターケース内の横断面全体が有効ろ過面となり、エーハイムならではの完全なろ過を行います。
水中ポンプタイプの外部式フィルター
水中ポンプタイプなので、呼び水不要で電源を入れるだけで簡単に開始出来ます。
外部式フィルターを使うメリット・デメリット
まとめ
水槽用フィルターの種類によって、水槽目的への向き不向きがあります。また、水槽のサイズや構造によっても、使用する事ができるフィルターが決まってきます。
今回は触れていませんが、オーバーフロー水槽は、ろ過能力・メンテナンス性に優れたフィルターシステムになりますが、初期投資やその構造上、初心者向けではないため記載しませんでした。
水槽用フィルターを色々改造・改良したりするのもアクアリウムの面白さになるので、ある程度参考にしてもらって、自分の目的にあった水槽用フィルター(ろ過器)を選択する参考にしてみて下さい。
最終更新日:2023/12/18
コメント
こんにちは、拝見させて頂きました。もの凄く分かりやすいですね〜初心者の私には、とても参考になりました、フィルターは、5種類を試しながら毎日が勉強中です、いま、まだ未経験の上部フィルターを検討中です、水槽〜奥が深いですね〜失敗の積み重ねです、でもそれ以上にやり甲斐あって楽しいですね〜ネットで色んなサイト見ましたが、こんなに詳しく分かりやすいのに巡り会えて大変嬉しいです ありがとうございました。
> アブジジ さんへ
初めまして、ブラックコーヒーです。
コメントありがとうございます。
自分もまだまだ、初心者の域を脱せず勉強の日々です。
>こんなに詳しく分かりやすいのに巡り会えて大変嬉しいです
非常に嬉しい言葉、ありがとうございます。
最近忙しくてなかなか記事を書けていませんが、このような言葉を貰えるととてもモチベーションがアップします。
まだまだ、分かり易い記事を書けるよう努力しますので、当サイトをこれからも宜しくお願いします。